三千学坊!


−ジャッ、ジャッ、ジャッ−

随分登るんだな〜!

「ふうっ…!

こりゃ思ったより、ずっと大変だぁ〜!」

「どうじゃ?

この道は嶮しかろう!?」

「うんっ!

想像していたよりもずっと嶮しくて、

足がムズムズしますっ!」

「はっはっはっ!

わざわざ一番嶮しい道を、

選んでおるからの!」

「…ぇえええ〜っ!?

なんでまたわざわざ…!」

「それはの、おヌシは若い!

だから道は嶮しい方が良かろう♪」

???

「…なんでですか?」

「そのうちに、分かる♪

わかるのだ、にょるじっぱい」

「おりぇの名前はにょるじっぱい、

じゃなくて、

にょるじっぺいですよ!」

なんだか、不思議な人だなぁ…!

威厳があるのに、くだけてて…♪

…?

それにしても、よくわからないな…?

道は険しい方がいい?

…ま、いっかっ!

「そのうち分かる!」

って言ってくれたわけだし♪

「それにしても、

見かけより、ずっと急ですね〜っ!

下から見たときは、

もっと緩やかに見えたのにっ…

…よっと!」

「そうじゃ!

この山には幻術がかかっておる♪」

「…幻術!

尻尾といい空を飛んだことといい、

シンヨウ先生、

‘魔法使い’みたいですねっ!?」

「尻尾はほれっ!

このとおり九尾である!」

「ありぇりぇっ、

さっきのは錯覚じゃなかったんだっ!

そうすると、

この山は幻術で、尻尾は現実で、

空を飛んだのは霊力か…!

…ちっ、違いは…何ですかっ???」

「そう大差はないの!

どれも人外(じんがい)の力じゃ!

はっはっはっ!」

「んんん〜っ…

ちっともわからない…!

…にゃんだるふの魔法とは、

また違うのかなぁ?」

「…おヌシ!今なんと申した!?」

「んっ?

あっ、魔法とは違うのかなぁ〜、って…」

「そ、その後じゃ!

‘にゃんだるふ’

と、言わなかったかの?」

「言いました!言いました!

にゃんだるふは

おりぇのお父さんで…!」

「…おヌシ、‘にゃんだるふ’どのの、

お子であったか!」

「えっ!?

にゃんだるふのことを

知っているんですか!?」

「知っているも何も!

にゃんだるふどのはワシの旧友じゃ!」

「えぇ〜っ!

そうだったんですかっ!

それで笑い方が豪快なのか♪」

「…?

どういう意味じゃ、それは???

…と、ともかく、

にゃんだるふどののお子は、

すでに先立たれたと聞いておったが…?」

「にゃんだるふは、

その後でおりぇのこと拾ってくれたんです!

そりぇからおりぇをずっと育ててくれて…

…亡くなったのはたぶん、

にゃんだるふと

奥さんの子どもじゃないかなぁ…

何度か話を聞いたことがあるから…」

「そうであったか!

どうりでまだ小さいわけじゃ♪

おヌシは幾つになるのじゃ?」

「おりぇ!?

おりぇは今年で…

今年で幾つになるんだろう!?

…っていうか、今年、何年!?」

…最後の誕生日祝いをしたのは、

一体、いつだったかな?

あれは確かにゃんだるふが、

患う前だったから…

ひい、ふう、み、よ、いつ、むう…

「…すぃません!おりぇ、

日付、覚えられません…!」

「…はっはっはっ!

それこそ豪快じゃの!

それもまた生き方よの~♪

よいよい!ラフじゃ!ラフにいけばよい!」

-ポリポリ-

なんか恥ずかしい…!

「よしっ!

わしの見立てでは、おヌシは15才じゃ!」

「15才!?

おりぇ、まだ全然そんな年じゃ!

お肌もピチピチだし!」

「まあ、それはよいのじゃ、

にょるじっぺい!

われらの里では15才は立派な大人じゃ♪

おヌシは、わりかし、しっかりとしておる。

それに腰の刀も飾りではなかろう?」

「…こ、これは!た、只の飾りですよっ!?」

「なんとっ!

竹光(たけみつ)であったか…!」

「あ、いえ!ただの新聞紙です…」

「なぬっ?新聞紙となっ!?

ワシの目はフシ穴であったか!」

「はい…!…あ、いえいえ!

‘大都’でもらったんだけど、

なんか悲しいことばっかり書いてあるから、

丸めちゃいました…!

おりぇがにゃんだるふと暮らしていた、

‘あっちの世界’では、

こんな悲しいことはなかったかりぁ…」

−ジュル−

「…よいよい。もうもう、申すな♪

さぞや辛かったであろう…!」

−ズルッ−

−ぐすん−

「ざぞやにゃんだるふ殿は、

おヌシを慈しんで育てたのであろうな!」

−じゅるじゅる−

-ずび〜-

「にゃんだるふ殿は

ワシに申しておったとおり、

安らぎを探しに行かれたのじゃな…!」

−ちぃ〜ん−

「ほれっ!

面を上げるのじゃ!

見えてきたぞ!

我らが三千学坊が♪」

「あっ…!」

う〜わぁ〜〜〜っ♪

すっごいなあ!

屋根があんなに並んでる!

ギャロン渓谷みたいだ!

−じゅり−

「あれは家ばかりでないぞ!

我らが学び舎であり、

この世界の無二の‘学問所’なのじゃ!」

「うわぁ〜っ♪

すごい眺めだな〜っ!」

「ぬっ…!聞いておらんな!?」

あんなてっぺんまで、屋根が見えたぞ!

誰が住んでいるんだろう!?

「ここでは何を学べるんですか!?」

「古今東西のあらゆることじゃ!

しかしその前に、オヌシ!

目の前の人間からも、学ぶことが大事じゃぞ!

まあ、ともかく…三千学坊へ良く来たの♪

皆、歓迎するぞっ!」

「やったぁ〜♪着いたーっ!」

−タッタッタッ−