美しき白浜♪



-さわさわさわさわ♪-


「うわーっ!!
きれいな浜辺だなぁ〜♪」

「ほんとうに美しい海ですねぇ〜!」

「いや〜!まったくだぁ〜!」

「ほりぃえっ!!」


-バササッ!-


「ハハハッ♪
砂なんか蹴らないでくださいよ、
じっぺいさん!」

「ははは〜ぁ!
いいじゃねえかぁ〜!
せっかくの海だぜ〜!!」


-バババババッ!!-


「うわっ!
イサオ!やりすぎ!やりすぎ!!」

「はははぁ〜〜〜!!」


-ドンッ!!!!-


「オマエラ!!」

「ど、どうしたのマサル…?
…そんな怖い顔しちゃって???」

「おうよ〜!
オマエもせっかくのこのビーチを
楽しめや〜〜〜!」

「おれたちは、
山を目指していたんだろうがっ!?」

-ドドンッ!!!!!!-

「ここはまっさらな海じゃねえかっ!!」

「た、確かに…っ!!」

「ハハハ…」


-ガックシ…-


「どうしておまえらはそう、
歩いた先からものを忘れていくんだ…!!

やいこのアヒル!!」

「ハイ♪なんでしょう???」

「…このボケいぬ!!」

「…ひ、ヒドいなぁ…!」

「それはマサルさん、
暴言ですよ!」

「オイ〜ッ!
オサル〜〜〜!!
舎弟同士で争うんじゃねぇ〜!
盃を交わした仲だろうが〜〜〜!!」

「おれがいつ交わした!!」

「しまった〜〜〜っ!!
俺としたことが忘れてたか〜〜〜!!」


-ヘタ…!-


「もう…イイ…!
…どうとでもなれだ!!」



どうたぬき!


「ようやく思い出したぜ!」

「おっ!?」

-ピョイン!-

「ヘロン・ハチロウタと言えば、
あの伝説の剣豪じゃねえか!!」

「そんなに有名なの!?」

「聞いたことがありますよ…
なんでも
ドウタヌキと呼ばれる剛剣を振り回し、
片手で鬼を引き抜いたという…」

「そうだ!あのハチロウタだ!!」

「お、鬼を…引っこ抜く…!?」


あの人なら出来そうだな…
どうたぬきエルボーといえば…


「とはいえ、
剣豪ハチロウタと言えば、
ドウタヌキがトレードマークでは…?」

「確かに…あいつは素手だったな…」

「なんだ〜知らねえのか〜!?」

「知ってるの!?イサオ?」

「おうよ〜!ハチロウタと言えば、
どこぞの剣士にやられて以来、
肉体改造に改造を重ね、スゲ〜ことになった〜!
って有名じゃねえか〜!」


肉体改造に次ぐ、肉体改造…
それであのボディが…
…ちょっと羨ましいな!
あれなら高くまでジャンプ出来そう♪


「あのハチロウタが…」

「それも無名の剣士らしいぞ〜!」

「へっ!噂ってヤツはおひれがつくからな♪」

「…あれ?どうしたんですか、じっぺいさん。
急にボーっとして…」

「こいつがボ〜っとしてんのは〜
いつものことじゃねえかよ〜!!」

「上手いこと言うねぇ…」

「…本当にボーっとしてんな…」


肉体改造に続く、肉体改造…



…銅タヌキを振り回して肉体改造かぁ…



ヘロン・八郎太!?


「改めて自己紹介を…
私の名前はヘロン、ヘロン・八郎太だ」


へ、へろん…はちろ〜た?


「は、八郎太!?
おまえがまさか…あのっ!?」

「誰なんだぁ〜!?」

「だりぇなの!?」

「…思い出せねぇ!」

「…」

その名はウォ〜ブンチュ♪


−ピキン!ピキピキ!−

「ふんぬっ!」


おおっ!
バックブリーカー!


「おわっ!ロッカ!?」

「すげえ!」

「や…やるじゃねえか〜!」

「やりますねぇ〜!」


-ブンブンブン!-


今度はジャイアントスイング!?


「キ、キニスキー!?」

-ポ〜ンッ!-

「投げたっ!?」

「落ちてくるぞ!逃げろ!」

-スタコラ!スタコラ!-

-ヒュ〜!-

-ズッドーンッ!-


「このへんでトドメ…
もといフィニッシュだっ!」

-ピキピキピキピキ!-

「あっ!?ありぇは!?…うぉ〜ぶんちゅ!?」

「三賢者のマーク!?」

「ありぇ?
アヒルどの、知ってるの?」

「それはもちろん…あっ!」

「あっ!ゴンタが元に…」


-ピキピキピキピキ!-


「ウホ〜ッ!キンニクが眩しすぎるぜ!
目が潰れる…!」

「ほらよ〜!サングラスだ〜!」

「こいつは助かるぜ!」

-スチャ!-

「ぷっ!」

「…クッ!」

マサルとイサオが、
めっちゃくちゃヤンキー風に
なってるじゃまいか♪


-ピキピキピキピキ…-


「ゴンタ〜!」

-キュキュキュ…-

「良かった…!元に戻ったね、ゴンタ!」

「でも…相当、弱っていませんか…?」

「心配ない。
私が筋力を分けあたえよう」

「き…」

「筋力を…?」


筋力って…
分けあたえるものなのかな…???


「ホウリャ!」

-ピキピキピキピキ!-

「ぎゃあっ!」

「目がっ…!」


目が潰れる!


「オイ〜ッ!サングラスは常備しとけ〜!」

「あ、ありがとう、イサオ…」

「ありがとうございます、イサオさん!」

「礼にはオヨバね〜!」

-スチャ!-

-スチャチャ!-


…おりぇたち、IBM?

…違った、
BMIだ♪



謎のマッチョサギ、ヘロン!


「オイッ…なんだあの強さは…?」

「ぜえ〜っ…ぜえ〜っ…」

「4人がかりでも…
勝てそうにありませんね…!!」

「起きろ〜…子分ども〜…」


「ピギャーーーッ!!」


なんて強さなんだ…!!
全く歯が立たない…!


「ピギャーーーーッ!!!」

-バリ〜ンッ!!-

「…うわっ!!」


窓の破片が飛び散ってくる!!
危ないっ!!


「みんな避けてっ!!」

「うおっ!」


-ババッバッババリンッ!!!-

-パラパラパラパラ-


…んんっ?
頭に…振ってこない?
ありぇりぇ…?

-ヒョコ-


「大丈夫ですか!?」

「おおっ…なんとか…
あっ!?」


「無事か?」

-ピッキーン!-


「…誰っ!?」


なんだ!?
あのスゴい筋肉の持ち主は!?


「私はヘロン。
この場は私に任せるといい!」

「任せるとって…」

「ドウリャ!」

-ピッキーン!-

「うわっ!!筋肉が眩しい!!」



「今、元の姿に戻してやるぞ!
火ギツネよ!」

-ピキピキーン!-

火を吹くゴンタ!


-スッタタタタタッ!!-

「大丈夫ですか!?じっぺいさん!!」

「あっ!アヒルどの!!
大変なんだ!!
ゴンタがっ!!」

「まさかっ!?
あの怪物に!?」

「そうなんだ!!
どうにかしないと!!」

「そうとあれば…!
やるしかありませんね!!」

「うんっ!!」

-ヒョイーン!!-

「覚悟っ!怪物!!」

「ああっ!?」


しまった!
なんかアヒルどの、勘違いさせちゃった!


「違うんだ、アヒルどの〜!!
そいつがゴンタの…!」

「大丈夫!
今、吐き出させます!!」

「ええ〜っ!?」


ダメだ、こりゃーっ!!
完全な誤解になっちゃってる!!


-ドドドドドドッ!-

「どうした〜!子分ども〜!?」

「ありぇ!?イサオ〜!?」


うわ〜!
最悪のタイミングだ〜っ!!


-ヒュン!-

-ドスッ!-

「キュギャギャーーーッ!!」

「探したぜ!
世話を焼かせやがってよう!」

「マサルまで〜!?」


ああっ…もうダメだ!
この事態は止めようがないぞ!?


「二人とも無事でしたか!
これなら勝てそうですね!
あの怪物にゴンタが!」

「なぁ〜にぃいいいっ〜!?」

「そいつはヤベエ…!!」


ああっ、みんなの気立ての良さが裏目に…!!


「違うんだ!!
そいつがゴンタなんだ!!」


「テイッ!!」

「オラ〜ッ!」

「ソラ!」

-ピシッ!-

-ドカッ!-

-ドスン!-


「ああ…もうダメだ…」


「キュギャギャギャギャガ〜ッ!!」


デエエイッ!!
こうなったらもうヤケクソだっ!!


「でりゃああああぁ〜〜〜っ!!」

-ピョイ〜ン!-

小屋の中は不透明?


-タッタッタッ!-

-タタタッ!-

-タッタッ…-


「…」


また迷子になっちゃった…


-キュイ?-

「へへ…どうしよう、ゴンタ?
またおりぇ、迷っちゃった…」


今まで、迷子になったことなんて、
そうそうないのに…

なんでこの小屋に入ると…?


「ありぇ?
あのガラス窓、直ってるぞ?」

-トコトコトコ-

「この前の小屋とは…
やっぱり違う小屋…なのかな?」


それにしては、あんまりにもそっくりすぎる…
一体、ここはなんなんだろう…


「ねえ、ゴンタ、ちょっと怖くなってきたから、
出ようか…ありぇ?
…ゴンタ?ゴンタ?」


-キュキュキュキュキュ!-


「ちょっとゴンタ?
どうしたの?」


-キュキュキュキュキュキュキュキュ!!-


-ズズッ…!-

-グズズズズッ!-


ええっ!?
ゴンタが大きくなってる!?


「ゴンタ!?ゴンタ…!?」


-キュゴゴゴ〜ッ!!-


「ええっ!?ゴンタ〜ッ!??」


-ボボワワーッ!!-


ゴンタが火、吹いたーっ!?


-キュボワワ〜ッ!!-


「うわっ!!アッチィ!!」



またしても奇妙な小屋


「ねえ、アヒルどの…
あの小屋って行きにも見なかったっけ?」

「そう言えば…でも数字が増えていませんか…?」


-ひゅどろ〜ん-

-ずび〜ん-


「なんか…気持ち悪いよね…」

「避けて通りましょう!
無駄な時間を取られるかもしれませんから…」

「なぁにビビってんだ〜!オラ〜ッ!」

-とっつかと〜!-

「ああ!イサオ〜!?」

「待ってください!
イサオさ〜ん!」

「ほっとけ、ほっとけ!
あんなやつ!」

「マサルさん、怖いんですか?」


おっ、アヒルどのがマサルを…


「なにっ!?
俺がビビるわけねえよっ!
行ってくらぁ!」


おおっ!
マサルが…!


「アヒルどの…今の上手いね♪」

「ハハハ!
この場合、出来るかぎり助け合わないと…
イサオさんが心配ですから、行きましょう!」

「うん!」


-タッタッタッ!-

-キュイ?-


「あれ?
ゴンタは…?」



再び三千学坊へ!


「もう火の山があんなに遠くだね…!」

「そうですね、この山の連なりを越えたら、
また三千学坊への道に繋がっていますよ♪」

「なんか懐かしく感じちゃうなぁ…
シンヨウ先生は元気かな!?」

「元気ですよ、きっと!」

「ねぇ!きっとまたニコニコ笑ったり、
プンスカ怒ったりしているんだろうね!」

「ハハハ…じっぺいさん…
シンヨウ先生を怒らせたんですか…?」

「ううん…ないけど…?」

「そうですか!それは良かった!」

「…んっ?…どうしたの、アヒルどの?
冷汗かいてるよ?」

「いやいやいや…!」

-タラーッ-


アヒルどのが冷静さを失っている…
あのアヒルどのが…

そんなにシンヨウ先生って恐いのかな…?

…そう言えば初めて出会った時の、
あの殺気は尋常じゃなかったかも…?

怒らすと恐いのかな…
やっぱり…


「まっ、まっ!
アヒルどの、喉でも渇いてるんじゃないの!」

「ハハハ…!」

-ゴキュゴキュゴキュゴキュ!-

「ああっ!
アヒルどの!飲み過ぎ!飲み過ぎ!」

「ああ…すみませんでした…!」

-バタッ…!-

「き、気絶した〜っ!?」

「どうしたんだ〜!あ、じっぺい〜!?」

「あっ!イサオ!
アヒルどのが気絶しちゃったよ!」

「だらしね〜!
一体、どうしたんだ〜!?」

「シンヨウ先生の話をしてたら…」

-ガクッ…!-

「あれっ!?
…イサオ!イサオ!?」

「申し訳ねえ〜…
古傷が痛んじまってよ〜…!」

「ええ〜っ!?」

「その気持ち…わかるぜ…」

「マサルまで〜っ!?」


一体、シンヨウ先生はどこまで…!?


-キュイ?-


「…知らぬが仏か…」

-キュイキュイ♪-


う〜ん…

ゴンタの住まう黒い箱


-キュイキュイ♪-

「ネエ、ゴンタ…そこから出てこない?」

-フルフルフルフル!-

「首を横に振っていますね」

「だね…弱ったな…せっかくおじさんに直してもらったのに…」

-ゴンゴン!-

「チャッチャッと!
追い出したらどうだ〜!?」

-ゴゴン!-

「ちょっとイサオは無茶しないでよ!
…イサオが壊しちゃうじゃないの!」


あ〜ぁ…
なんだかすごい旅になってきたな…!
おりぇ、アヒルどの、ゴンタ、イサオ、そしてマサル…

…順番的には、おりぇ、アヒルどの、イサオ、マサル、そしてゴンタ…
いや…厄介順に並べ直すと、
アヒルどの、おりぇ、ゴンタ、マサル、そしてイサオか…

いや、でもマサルとイサオは同じくらいだから、
おりぇ、アヒルどの、ゴンタ、そしてイサオとマサルかな…

うん、これがしっくりくるぞ!
おりぇ、アヒルどの、ゴンタ、イサオとマサル。
うん!これだ!


「ぬぁ〜にがこれだ〜!だ〜!このトンマ〜!」

「オイ、オレとこのチビを一括りにすんな!」

「そうですよ!まるでどこかのコンビ芸人みたいじゃあないですか…
…プッ!」

「ありぇ?聞いてたの…?」

「聞いてるも何も、思ったことがダダモレじゃあねえか〜!?」

「えっ!?うそぉ!?」

「ハハハ!ダダモレですよ!」

「やいダダモレ!さっきのマサルとイサオを取り消せ!」

「さりげなく順序が逆になってますよ?」

「クッ…!」

「オマエラ〜!」

-キュイキュイ!-

-ギャースカ、プースカ-


-ゼイゼイゼイ…-

「い…いい加減にしろよな…!
誰がお猿なマサルだ…!」

「オマエ以外の誰が猿顔だと思ってんだ〜!」


イサオって、メチャクチャタフだな…
なんであんなにプルプル震えてるのに、
逞しいんだろう…?


「それは彼が勇敢な仔鹿だからですよ♪」


へぇ〜!
勇敢な…んっ?


「ありぇ、やだなぁ…
おりぇまた喋ってた…?」

「ハイ、バッチリ!」

「そっか〜!はっはっはっ!」


ありゃりゃ、ゴンタが黒い箱の中で眠っちゃった!

-スス〜、ププ〜-


-ギャアギャア!-


「ありぇ?アヒルどの、あの二人は?」

「あそこですよ」

「…随分、遠くだね…
…置いてっても大丈夫かな?」

「ハハハ!旅は道連れ、世は情けですよ!」

「確かに…」


-ゴチン!ドカッ!-

おさる、マサル、イサオ、キレル


「キュイキュイ♪」

「可愛いなぁ…ゴンタ♪」

「本当にゴンタで良かったんですか?」

「だって、コイツ…

ゴンタ♪って感じじゃまい♪

うふふ…」

「う〜ん…」

「まあどっちでもいいじゃねえぁ〜!

最後はナベにしてくっちまうんだしよ〜!」

「食べないよ〜!」

「じゃあ何に使うんだ、コラ〜!」

-プルプルプル!-


「うるせえチビだな!」


「誰だっ!?」

「俺か?俺は…!」

-ひゅ!-

「おおっ…気障!」

-スタッ!-

「俺はマサル…!

帰りの道中を教えてやるために、

わざわざ来てやったんだ。

感謝しろよな…!」

ア「それはありがたい!」

-ペコリ-

「いや、ホントに!」

-ペコ-

「なんだ〜!?この猿は〜!」

-プルプルプル!-

「何だ、このチビは…?」

あっ、マズイ…!

「立て続けに2度もチビ呼ばわりとは、

ナンダコラァ〜!?」

-ドスッ!-

「あらよっと!」

-カキーン!-

「トンファ!?」

「猪口ざいなぁ〜!」

-ドドスッ!-

-キンッ!ボコンッ!-

「オラ!」

「…す、スゴイ…!」

「イサオもやりますねぇ!」

「そ、そうだね…!

それにあっちのお猿も!」


「オラッ!」

-ヒュン!-

「効くか、コラ〜!」

-ドコッ!-


「さっ、おりぇたちはお昼にでも…

お出で〜!ゴンタ〜♪」

「キュイキュイ!」

「じっぺいさん、

そこにさっきのお猿さんが落としている

おにぎりがありますよ♪」

「おっ♪みんなで頂くとするかぁ♪」

-ムグムグムグ-

「いいかい、ゴンタ。

あんなダメなこと、

見てちゃダメだよ〜?」

「キュイキュイ」

「いやぁ、

すっかり懐ききってしまいましたねぇ…♪」

「いや、ホントに♪」

-モグモグ♪-


火ギツネ、ゴンタ


「これは…」

「さすがですね!じっぺいさん!

ヤクマル先生の訓練を乗り越えただけの…

…んん?」

「よくやったな〜!じっぺい!」

「キュイキュイキュイ!」

「何ていうか…これは…」

ア「そうですね…これは…キツネと言うより…」

「タヌキ捕まえてどうすんだコラ〜!?」

「ありぇ?ありぇりぇ?」

「キュイキュイキュイ!」

「キュイキュイキュイ!」

-ヒュ!-

-ヒュ!-

「あっ!他の火ギツネが…!」

「みんな逃げちまう前に、俺がとったら〜っ!」

-プルプルプル!-

「…この子でイイのかな…?」

「キュイキュイキュイ♪」

「よっ…ヨロシクね!」

「キュイ♪」

「良かったですね…懐いてくれて…」

「ねえ…本当にそう思ってる?

アヒルどの…?」

「ハハハ!」

いいのかなぁ…こんなんで…?

「キュイキュイキュイ!」

「…かっ、カワイイ!」

-ドキューン♪-

こっ、この子にしよう…!


火ギツネを捕まえろ!


「そっちに行きましたよ!」

「よ〜し!今渡こそっ!」

-ぴょい〜んっ!-

-ゴチ〜ン!-

「痛ぁ〜っ!」

「大丈夫ですか、じっぺいさん!?」

「…なんのこれしき…」

-バタッ…!-

「タマ、トッタラァーッ!」

-ピョイーン!-

-プルプルプル!-

-ひょい-

「素早しっこい!」

「チッ!俺としたことが〜!」

ア「…面白い子鹿ですね…♪」

「むぐぐ…何とか捕まえなきゃ!」

-ぐぐぐ…-

「どりゃぁ〜!」

-ピョイ〜〜〜ンッ!-

「おおっ!じっぺいさん!」

-パシンッ!-

「捕まえたーっ!」

「おおっ!鉄砲玉が獲りやがった〜!」

ア「くっ…面白いことを言うじゃありませんか…♪」

「キュイキュイキュイ!」

「ありぇ!?これは…!?」



火の山!


-トコトコトコ-

「それにしても何だったんだろうね…?

あの小屋は…」

「不思議な話ですね…

出口と思った方向が入り口だったなんて…

そんなに広い小屋には見えなかったのに」

「そうなんだよ!

全然、見かけと違うんだ!

おりぇ、相当走ったのに、

出てみたら直ぐ裏側だったからビックリして…!」

「本当に奇妙な小屋ですね…」

-ぷるぷるぷる-

「そんなこと言って、

ビビって小便チビったんじゃないのかぁ〜!」

「そんなことしないよ…!!

まったくイサオは…!」

「まあまあ、無事だったわけですし」

「そろそろ、火の山だぞ〜!

心してかかれや〜!」

「…はいはい…!

それにしてもスゴい熱だね…!」

「噂に違わぬ火山ぶり…!

私、初めて来ましたよ!」

「そうなのっ!?おりぇ二度目♪」

ア「へぇ〜!…あっ!」

「ふぇ?」

ア「今、火ギツネがっ…!」

「あっ…!」

「待てやコラ〜っ!」

「あっ、イサオ!」

-タッタッタッ!-

「待ってください!私も…!」

-トットットッ-



立て付けの悪い窓


-タッタッタッ!-

「お〜い!イサオ!

…って、あれ?いない…」

-ガタガタガタガタ!-

「うわっ!何だ、あの窓!」

-ガタガタガタガタッ!-

-ゴドッンッ!-

「うわっ…!」

-ガシャーンッ!-

-パリン…!-

「…危なかった!

それにしてもいきなり割れるなんて…!」

-ガタガタガタ…-

「立て付けが悪かったんだな!きっと!」

-タッタッタッ!-

「お〜いっ!イサオ〜っ!」


-ガタガタガタ…-



不思議な小屋


-ぬどぉ〜ん…-

「なんか陰気な建物だね…」

「そうですね、陰鬱な感じというか…」

「ぬぁにビビってんだ〜!?」

-ぷるぷるぷる-

「あっ、行っちゃった…!

お〜い!待てよ、イサオ〜!」

-タッタッタッ!-

「まっ!待ってください、じっぺいさん…!」

-ヒュー…-

「こんなところに一人で置いてけぼりとは…」

-ヒュ〜-

「…怖い!」



-タッタッタッ-

「どこだ〜イサオ〜!?

…いないなぁ…」

「…ぬぁにぃ…こらぁ…!」

「あっ!イサオだ!」

-タッタッタッ!-



勇敢なる子鹿、イサオ!


-ズルズルズル-

「大丈夫、アヒルどの?」

「なんとか…」

「でも、良かったよ!

結果的に一緒に旅を出来て…」

「なぁにぃ気持ちの悪いこと言ってんだ〜!」

「うるさいなぁ、もう…!」

「ブチブチ言ってる暇があったら、

本気で歩けや〜!コラ〜!」

「ハイハイ…本当にうるさいんだから、

おチビのくせに…マーシィみたいだな!」

「なぁんだとコラ〜!?

俺の何処がチビだってんだぁ〜!?」

「どう見ても全身が!」

ア「クッ…!」

-ぷるぷるぷる…!-

「イサオ、もっとリラックスしなよ?

力み過ぎだよ!」

「ぬぁ〜にぃ〜!?

この気の抜けた炭酸ニャロ〜め〜!!」

「まあまあ二人とも…」



アヒルどのとの別れ?


-トタトタトタ-

「…さあ、そろそろですか!」

「じゃあ、この辺で…」

-ボトン…-

「なんか…寂しいですね…」

「そう言わないでください…また会えますよ!」

「…そうですね…また…!」

「それにしても…いない…

ここで待ち合わせのはずなんですが…」

-ぷるぷるぷる…!-

「なぁに~無視してくれちゃっててんだ~!

コラァ〜!」

ア「なっ!?」

「ほぇ!?」

-キョロキョロ-

ア「誰もいない…?」

「でも今、スゴい声がしたよね!?

ひび割れた鍋が鳴ったような声が…!」

「だぁれがひび割れた鍋だぁ〜!

このトンチキがぁ〜っ!」

「ほへっ…!?」

-キョロキョロキョロ-

ア「あっ…!」

「なんだこの子鹿は…?」

「俺がイサオだ!覚えとけコンニャロ〜!」

ア「ひどく言葉遣いが…」

「その上、態度もデカい…」

「なんだとこのヤロ〜ッ!?」

-ドスッ!-

「ぶげっ!」

「止めてください、イサオさんっ!」

ぐへっ…!

何てヤツなんだ!

「俺がイサオだ〜っ!文句あんのか〜っ!」

-ドスッ!-

ア「グフッ…!」

「あ、アヒルどの〜!?」

「む…無念です…!」

-ドサリ…-


無敵の撃剣!


-ブン!ブン!ブン!-

「でぇいっ!でぇいっ!でぇいっ!」

-ヒュンヒュンヒュンヒュン!-

ア「ハッ!ハッ!ハッ!」

「二人ともども、そこで休憩…」

「やった…!…やっと休みだ…!」

-ペタッ…!-

ア「…ふぅ…さすがにしんどい!」

「はぁ…はぁ…はぁ…

いつまで続くんですか…この練習…!」

「いつまでなんでしょう…!?

私にもさっぱりわかりません…!

厳しいとは聞いてはいたのですけど…

…正直、ここまでしんどいとは…!!」

「…そ、そうなんですか…!」

「では練習を再開する」

うへぇ…

もう休憩は終わりかぁ…!

…めちゃくちゃキツイなぁ…!

「なんと短い休息!

…じっぺいさん、

ティータイムがあったらいいですね♪」

「ほんとですねぇ〜!

お茶とお菓子でホッと一息…

…あぁ…飲みたいなぁ!

美味しい焦げ茶が…!!!!」

-ヒュンヒュンヒュン!-

-ブンブンブンブンブン!-

「その調子で、手早く振り下ろすこと」

「おおおぉりゃ!」

-ブンブンブンブンブンッ!-

「二の太刀は無い。

力一杯打ち込めば、一刀目。

そこで悔いある、二の太刀ならんぞ」

「おおおおおおりゃっ!」

-ブンブンブンブンブンブンブンッ!-

「おおっ!やりますね、じっぺいさん!」

-ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ!-

ヤ「その調子、その調子」

-ブンブンブンブンブンッ!-

-バキッ!-

-グシャリッ!-

-メキャメキャメキャ…!-

「折れたわけだ。上出来、上出来」

「おお〜〜〜っ!

じっぺいさん!やりましたねっ!」

何がやったんだろう…?

…焦げ茶のことを考えていたら、

さっきまで打ち込んでいた木が折れてるぞ?

…!

おりぇが折ったのか!

「…おわっ!!」

「すごいです!じっぺいさん!

ついにやりましたね!」

「…や…やっちゃったみたいですね…!?」

「やりましたよ!やりましたね!」

「…や、やっちゃいました!

…やった!

やた〜!出来た〜〜〜!!」

「野太刀、打ち下ろし、2合は無し。

叩っ斬る気迫で、まずは断つ。

今夜は祝杯!」

「ほんとっ!?」

「ハハハッ!やりましたね、じっぺいさん!

今夜はドンチャン騒ぎですよ!」

「やった!思いっきり遊べるぞ〜〜〜!」

「ハハハッ!楽しみですねぇ〜♪」

「楽しみですねぇ〜〜〜♪

やった〜〜〜!」

-ポイッ-

-ガランガランガラン…-

…あっ…!

勢いで野太刀を投げ捨てちゃった…

…先生の目が笑ってないぞ…!

「大丈夫ですよ!じっぺいさん!

人生は山あり谷ありですよ!」

ナイスフォロー!

アルフレッドさん!

「いやぁ…」

「…今のうちに、早く休憩室に行きましょう…!!」

「…そうですね!」

-スタコラサッサッ-

-ヒューッ!-

「仲良しに免じて、見逃すとしよう。

既にいない、若者二人」

-ひょい-

-パシ-

「仲良き事は、美しい。

今夜は祝杯、ノンアルコール

-スタスタスタ-



ヤクマル如水!


-トタトタトタ-

ふぇ〜っ!

景色の綺麗なところだなぁ〜♪

「もうここはクジュウですよ、じっぺいさん!」

「おっ!やった〜〜〜っ!

ようやく辿り着いた〜〜〜♪」

-スッ-

「そうじゃ、ここが地獄の入り口」

「…だっ!誰だっ!?」

-スススッ-

「わしであるか。わしはヤクマル如水」

「先生、お久しぶりです」

-すっ-

「…えっ?

アルフレッドさん、知ってる人なの??」

「ハハハッ!知っているも何も!

ヤクマル先生に会うために、

ここに来たんじゃないですか!」

へっ…?

何も聞いてないぞ??

「…そっ、そうだったんですか??」

「そうじゃ。

ここでお主たちは地獄の苦しみを味わう。

即ち苦渋」

「…クジュウで、苦渋…

ええぇ〜〜〜!!

まさかたったそれだけのためにここまで!?」

「ハッハハハハッ!

そんなことはありませんよ!

偶然に違いありません♪」

「うそだぁーっ!

絶対にアヒルどのは知っていたんでしょ〜!?」

「それはそうですけども…」

「では行くぞ」

「えええぇ〜!?」

-ワシッ-

-グイッ-

「ええぇ〜っ!?」

-ズルズルズルズル-


行きもトコトコ


-トタトタトタトタ-

-とことことことこ-

「アルフレッドさん…

まだクジュウには着かないんですか…?」

「まだですねぇ…かなりまだまだです…」

「そうですか…」

-とことことことこ…-

-トタトタトタトタ-

「少し…休憩しましょうか!」

「やったぁ〜!待ってました!」

-すたた-

-ぺたぺたぺた、とすん-

「いやぁ〜!生き返るなぁ♪

やっぱり休憩がないと長く歩けないもんだなぁ…!」

…そうか…!

それでシンヨウ先生は、

『犬も歩けば棒に当たる』

って言ったんだな…!

長く歩くのには、寄り道や休憩が必要なんだ…

そっか…!

今まで気がつかなかった…!

「いやぁ、休んでこそ歩くのも楽しいものですね♪

こうやって道行く景色を眺めると、

なにやら踊りたくなりますね♪」

「…えっ!?何を…???」

-スタッ!-

「もちろんレゲエを聞きながら、

ゆったりと体を揺らすんですよ♪」

へえっ…!

アヒルどのは踊りが上手いんだな♪

「ラテンなら何でも構いません♪

いや、良い音楽であれば何でも!」

「そういえば、おりぇの黒い箱に、

音楽が入っていたな…!」

-カタカタ カスン!-

-チャッチャララ チャラララララ♪-

「おっ!

スリーリトルバードじゃありませんかっ!

これはなんとっ♪」

「アヒルどのは知っているんですか!?」

「ええっ!もちろんです!
 
ここ!ここのくだりもイイんですよ♪」

「へぇ〜!

おりぇには詳しいことはわからないけど、

楽しそうな音楽は、

気持ちが晴れやかになってイイなぁ〜!」

-チャッチャララチャララ〜♪-

-スタッスタッスタッ!-

おおっ!

アヒルどの、カッコイイ!

…おっ、おりぇも!

-とんつかとんとん♪-

「おっ!イイですねっ♪」

-ととんとんとん♪-

「いやっ、もう、

YOSAKOIみたいになってますけど…!」

-とんつかとんつか!-

-スッスッスッ!-


我、真っ赤!


-ずぞぞぞぞっ-

「うまいですね♪このおソバ!」

「本当ですね!これは絶品!

こちらの葛きりは食べましたか!?」

「おっ!そいつはまだ♪」

-ズゾゾッ-

「その代わり、こっちのそばがゆは食べましたよ♪

良かったらどぉぞ!」

「すみません♪」

-パクッ!-

「ホォ!これはまた♪」

「でしょお~♪」

-ズルッ!-

「ところでアルフレッドさん!」

「ハイっ?」

-もひょ-

「このお店の名前、何ですか?

‘我、真っ赤!’

って不思議な名前ですよね!?」

-もひょもひょ-

「そう言われてみると、奇妙な名前ですね…

店の入り口にある小さな小川に引かれて、

店の名前には注意を払っていませんでした!」

「ああっ!あの水車!

すっごくイイですよねっ♪」

-ズゾゾッ-

「本当に…風情がありますねぇ♪」

「そうですねぇ〜!

いや、アヒルどのはわかる人ですねぇ〜!」

しまった!

またアヒルどのとっ…!!

「いやいや、じっぺいさん♪

なかなか味わえない旅情を、

一緒に楽しめる方だということに、

私も嬉しい限りです!」

「いや、そんな…♪」

アヒルどのって呼んでも、

本当に気にしないなんて、

スゴい人だっ…!アヒルどのはっ!

「はぁいはぃ!

デザートのそばアイスになります♪

こちらにそば茶のお代わりを置いときますね!

…それにしてもお兄さんたち!

若いのにオジサンくさい会話してるわねえ♪」

「ああ、すいません!

って、そんなにオジサンくさいですか…?」

-ぺこり-

「おばちゃんたちだって、

そんなこと、若いときに話さなかったわよ!」

「ハハハッ!

これは店のご婦人に一本取られましたね!」

「いや、まったく!ハッハッハっ♪」

「やあねぇ、アンタたち!オジサンくさいわねぇ♪

アイス、持って帰ろうかしら!?」

-ガタっ!-

-ガタン!ゴトッ!-

「そんな殺生な!」

「ご婦人…それだけは…!」

「まだ子供ねぇ♪アッハッハッハッ♪」

「女将さん、子供をからかっちゃイケねえよ!

どうせ絡むならウチの叔父貴の方に頼むよ!」

「やだよぉ!アンタんとこは!

ずっと酒を飲むばかりじゃないか!」

-キラリ…!-

「あっはっはっ!

…んっ?

今、アヒルどの…目が光りませんでした?」

「いやいや、じっぺいさん…!ご冗談を…」

なんか今、アヒルどの…おかしかったな??

「ところでオバさん!

ここの我真っ赤、素敵なお店ですね♪

あの水車、音が綺麗で!」

「あっはっはっはっ♪」

「ハハハ!我真っ赤か!

そいつはいい!

ハッハハハヒっ!」

…ん?

どうしたんだろう??

「アンちゃん!

ワレモコウって読むんだよ!

吾亦紅(われもこう)!」

「…ああっ!」

「オオッ!」

「アッハッハッハッ!

我真っ赤!

アッハッハッハッ!」

「ヒヒヒハッ!

飲んでもねえのに、

酔ってるのかと思ったよ、兄さん♪」

「お、お恥ずかしい…!」

「あら、やだ!

こっちのお兄さんが真っ赤になっちゃったよ!

アッハッハッハッ!」

「ハハハッ!」

「あ、いや、参ったな…」

-ずぞぞ…-


アヒルどの♪


-ダダダダダッ-

-タッタッタッ-

-トットットッ-

-トコトコトコ-

-トタトタ-

-トタン-

-ペタッ-

「ハァ〜、ハァ〜、ふああぁ〜」

ア「はっ、はっ、はっ」

「心臓が爆発しそう…」

「…私も…です…速いですね…!」

「いや…アヒルどのこそ…!」

しまった…!

ついアヒルどのと…!

「いえいえ、ジッペイさん!

…あなたは山の上から、ずっと走ってきたのでしょう?

並外れた心肺機能ですね♪」

「ありぇ?

自己紹介をしましたか、おりぇ?」

ア「あれ?

したようなものではありませんか!?」

「…確かに!」

「このままクジュウまで参りましょう。

その途中で、おソバでも食べましょう♪」

「やったーっ!」

-グゥ-

「胃も立派ですね♪」

「おっ、お恥ずかしい限りです…!」

「ハハッ!大盛りでいきましょう♪」

「…やったーーーっ!!」

-ぐぐぅ-


アルフレッドさん!


-タッタッタッ-

あれっ!?

誰だろう、あのアヒルさんは?

「あっ!ここです!ここですよ!」

「どっ、どこですか!?」

「ハハッ♪

噂どおりの方のようですね!」

んっ?

なんの噂?

-タッタッタッ-

-シュタタッ-

「山の麓まで一緒に走りましょう!

私の名前はアルフレッド!

ここにいる人たちは皆、

アヒルどのと呼んでくれます♪」

「あっ、アヒルどの~!?

…いいんですか、それで!?」

「構いませんよ!

この身空で殿扱いですから、

なんら文句はありません!」

そっ、そういう問題なのかな…?

「よしっ、じゃあアルフレッドさん!

このまま麓まで競争しましょう♪」

「望むところです!」

-ダダダダダッ!-

-ヒューン!-


オジサン再び!


-タッタッタッ-

「おおーっ!!

じっぺい!直ったぞーーーっ!!」

あっ、オジサンだ!

「お〜いっ!

おりぇ行くよ〜っ!

出発しま〜す!」

「おおーっ!そうか〜!

じゃあコレを持っていくといいぞーーーっ!」

-ポーン!ストン!パフッ♪-

「あっ!?軽い!

おりぇの黒い箱が一段と軽くなってる!」

「ガハハハ!

そうじゃ〜あ!

ずいぶん軽いじゃろ〜!?」

「ハイッ!

すっごく持ち歩き易いです!

おりぇの巻物みたいだ〜!」

-タッタッタッ-

「ハハハ〜ッ!

止まりもせんかーーーっ!

ガハッ!ガハッ!ガハハ〜ッ!」

-プゥ-

「くさっ!

…ハイ!おりぇはもう止まりませ~ん!」


-タタタタタッ-


「ガハハーッ!

あいつを見ていると気持ちがいいの〜〜〜!

故郷の海を思い出すわっ!」

-プププゥ〜♪-



我が行いにせずばかいなし


-じゅるり-

「…よいか、じっぺい」

「はひ…」

-ずぴぃ〜-

「何事も精進あるのみじゃ、倦まずたゆまず!」

「はひっ!」

-シャキィッ-

すすす、すごい迫力だな!

「己れを信じ、また自惚れず!」

「…はいっ!」

「…犬も歩けば棒に当たるじゃ♪」

-ズコッ-

「は、はい…?」

「はっはっはっ!

何事もその精神で行けば、

自然と道は開ける♪

楽しむのじゃ!」

「はいっ!」

「よしよし、何か困ったことがあったときは、

すぐ戻ってくるのじゃぞ?」

「…はいっ!…行ってきます!」

-ペコリ!-

「うむ!」

-ペコリ-

-タッタッタッ!-



古の道を聞きても唱えても


-たったったっ-

あっ!シンヨウ先生だっ!!

「せんせぇ〜ぃっ!!」

「おおっ!どうしたのじゃ、じっぺい?

そのように慌てて…!」

-たったったっ-

「先生っ、おりぇ!

この山を降りようと思います!」

「…そうかっ!!」

「はいっ!

おりぇ!

火ギツネを探しに行って、

森を守りたいから、

行ってきます!」

-たったったっ-

「うむっ!意気や良しっ!!

己が信じる道を進むのじゃ!」

「はいっ!」

「これは餞別じゃ!持っていくがよいぞ!」


-ひゅるる〜-


-ぱしっ-

「何ですか、こりぇ!?」

「それは四書五経

(ししょごきょう・ごけいとも)

のうち、

ワシがいくつか選んで写本したものじゃ!」

「…あっ、ありがとうございます!」

先生、わざわざ写本してくれたんだ!

「おヌシの巻物とは比べるべくもないかもしれん…

しかし時代は変われど、

人の世の真理は一つじゃ!

大いに学び、中庸(ちゅうよう)を知るのじゃぞ!?」

なんで先生は、

たまたま出会ったおりぇに、

ここまで優しくしてくれるんだろう…!

-ズズズッ-

あっ!いけねっ!鼻水が出てきちゃった!

「はっはっはっ!泣くなジッペイ!

お役目を果たさば、また戻ってこれよう!?」

「はっ、はいっ…!」

「山の麓に、おヌシの道案内をする者が待っておる。

まずはその者と、

九重(くじゅう)を目指すが良い!」

「くじゅう…?何処ですか?そりぇ!?」

「この山を下り、南に進んだ場所じゃ!

火の山に行く前に、

おヌシは行かねばならぬ…!」

「はっ、はいっ…!」

何があるんだろう…?

それに先生のこの目つき、何か怖いな…

-ズルズル-

「…じっぺい」

「はい!」

-ズルズル-

-ぶしゅ-

「…まずは鼻をこれで鼻を拭くのじゃ!」

「…はひっ」

-ちぃ〜んっ-

-じゅるじゅる-

「ありゃ…」

-びろ〜ん-

シ「…ううむ」