再び三千学坊へ!


「もう火の山があんなに遠くだね…!」

「そうですね、この山の連なりを越えたら、
また三千学坊への道に繋がっていますよ♪」

「なんか懐かしく感じちゃうなぁ…
シンヨウ先生は元気かな!?」

「元気ですよ、きっと!」

「ねぇ!きっとまたニコニコ笑ったり、
プンスカ怒ったりしているんだろうね!」

「ハハハ…じっぺいさん…
シンヨウ先生を怒らせたんですか…?」

「ううん…ないけど…?」

「そうですか!それは良かった!」

「…んっ?…どうしたの、アヒルどの?
冷汗かいてるよ?」

「いやいやいや…!」

-タラーッ-


アヒルどのが冷静さを失っている…
あのアヒルどのが…

そんなにシンヨウ先生って恐いのかな…?

…そう言えば初めて出会った時の、
あの殺気は尋常じゃなかったかも…?

怒らすと恐いのかな…
やっぱり…


「まっ、まっ!
アヒルどの、喉でも渇いてるんじゃないの!」

「ハハハ…!」

-ゴキュゴキュゴキュゴキュ!-

「ああっ!
アヒルどの!飲み過ぎ!飲み過ぎ!」

「ああ…すみませんでした…!」

-バタッ…!-

「き、気絶した〜っ!?」

「どうしたんだ〜!あ、じっぺい〜!?」

「あっ!イサオ!
アヒルどのが気絶しちゃったよ!」

「だらしね〜!
一体、どうしたんだ〜!?」

「シンヨウ先生の話をしてたら…」

-ガクッ…!-

「あれっ!?
…イサオ!イサオ!?」

「申し訳ねえ〜…
古傷が痛んじまってよ〜…!」

「ええ〜っ!?」

「その気持ち…わかるぜ…」

「マサルまで〜っ!?」


一体、シンヨウ先生はどこまで…!?


-キュイ?-


「…知らぬが仏か…」

-キュイキュイ♪-


う〜ん…

ゴンタの住まう黒い箱


-キュイキュイ♪-

「ネエ、ゴンタ…そこから出てこない?」

-フルフルフルフル!-

「首を横に振っていますね」

「だね…弱ったな…せっかくおじさんに直してもらったのに…」

-ゴンゴン!-

「チャッチャッと!
追い出したらどうだ〜!?」

-ゴゴン!-

「ちょっとイサオは無茶しないでよ!
…イサオが壊しちゃうじゃないの!」


あ〜ぁ…
なんだかすごい旅になってきたな…!
おりぇ、アヒルどの、ゴンタ、イサオ、そしてマサル…

…順番的には、おりぇ、アヒルどの、イサオ、マサル、そしてゴンタ…
いや…厄介順に並べ直すと、
アヒルどの、おりぇ、ゴンタ、マサル、そしてイサオか…

いや、でもマサルとイサオは同じくらいだから、
おりぇ、アヒルどの、ゴンタ、そしてイサオとマサルかな…

うん、これがしっくりくるぞ!
おりぇ、アヒルどの、ゴンタ、イサオとマサル。
うん!これだ!


「ぬぁ〜にがこれだ〜!だ〜!このトンマ〜!」

「オイ、オレとこのチビを一括りにすんな!」

「そうですよ!まるでどこかのコンビ芸人みたいじゃあないですか…
…プッ!」

「ありぇ?聞いてたの…?」

「聞いてるも何も、思ったことがダダモレじゃあねえか〜!?」

「えっ!?うそぉ!?」

「ハハハ!ダダモレですよ!」

「やいダダモレ!さっきのマサルとイサオを取り消せ!」

「さりげなく順序が逆になってますよ?」

「クッ…!」

「オマエラ〜!」

-キュイキュイ!-

-ギャースカ、プースカ-


-ゼイゼイゼイ…-

「い…いい加減にしろよな…!
誰がお猿なマサルだ…!」

「オマエ以外の誰が猿顔だと思ってんだ〜!」


イサオって、メチャクチャタフだな…
なんであんなにプルプル震えてるのに、
逞しいんだろう…?


「それは彼が勇敢な仔鹿だからですよ♪」


へぇ〜!
勇敢な…んっ?


「ありぇ、やだなぁ…
おりぇまた喋ってた…?」

「ハイ、バッチリ!」

「そっか〜!はっはっはっ!」


ありゃりゃ、ゴンタが黒い箱の中で眠っちゃった!

-スス〜、ププ〜-


-ギャアギャア!-


「ありぇ?アヒルどの、あの二人は?」

「あそこですよ」

「…随分、遠くだね…
…置いてっても大丈夫かな?」

「ハハハ!旅は道連れ、世は情けですよ!」

「確かに…」


-ゴチン!ドカッ!-

おさる、マサル、イサオ、キレル


「キュイキュイ♪」

「可愛いなぁ…ゴンタ♪」

「本当にゴンタで良かったんですか?」

「だって、コイツ…

ゴンタ♪って感じじゃまい♪

うふふ…」

「う〜ん…」

「まあどっちでもいいじゃねえぁ〜!

最後はナベにしてくっちまうんだしよ〜!」

「食べないよ〜!」

「じゃあ何に使うんだ、コラ〜!」

-プルプルプル!-


「うるせえチビだな!」


「誰だっ!?」

「俺か?俺は…!」

-ひゅ!-

「おおっ…気障!」

-スタッ!-

「俺はマサル…!

帰りの道中を教えてやるために、

わざわざ来てやったんだ。

感謝しろよな…!」

ア「それはありがたい!」

-ペコリ-

「いや、ホントに!」

-ペコ-

「なんだ〜!?この猿は〜!」

-プルプルプル!-

「何だ、このチビは…?」

あっ、マズイ…!

「立て続けに2度もチビ呼ばわりとは、

ナンダコラァ〜!?」

-ドスッ!-

「あらよっと!」

-カキーン!-

「トンファ!?」

「猪口ざいなぁ〜!」

-ドドスッ!-

-キンッ!ボコンッ!-

「オラ!」

「…す、スゴイ…!」

「イサオもやりますねぇ!」

「そ、そうだね…!

それにあっちのお猿も!」


「オラッ!」

-ヒュン!-

「効くか、コラ〜!」

-ドコッ!-


「さっ、おりぇたちはお昼にでも…

お出で〜!ゴンタ〜♪」

「キュイキュイ!」

「じっぺいさん、

そこにさっきのお猿さんが落としている

おにぎりがありますよ♪」

「おっ♪みんなで頂くとするかぁ♪」

-ムグムグムグ-

「いいかい、ゴンタ。

あんなダメなこと、

見てちゃダメだよ〜?」

「キュイキュイ」

「いやぁ、

すっかり懐ききってしまいましたねぇ…♪」

「いや、ホントに♪」

-モグモグ♪-


火ギツネ、ゴンタ


「これは…」

「さすがですね!じっぺいさん!

ヤクマル先生の訓練を乗り越えただけの…

…んん?」

「よくやったな〜!じっぺい!」

「キュイキュイキュイ!」

「何ていうか…これは…」

ア「そうですね…これは…キツネと言うより…」

「タヌキ捕まえてどうすんだコラ〜!?」

「ありぇ?ありぇりぇ?」

「キュイキュイキュイ!」

「キュイキュイキュイ!」

-ヒュ!-

-ヒュ!-

「あっ!他の火ギツネが…!」

「みんな逃げちまう前に、俺がとったら〜っ!」

-プルプルプル!-

「…この子でイイのかな…?」

「キュイキュイキュイ♪」

「よっ…ヨロシクね!」

「キュイ♪」

「良かったですね…懐いてくれて…」

「ねえ…本当にそう思ってる?

アヒルどの…?」

「ハハハ!」

いいのかなぁ…こんなんで…?

「キュイキュイキュイ!」

「…かっ、カワイイ!」

-ドキューン♪-

こっ、この子にしよう…!


火ギツネを捕まえろ!


「そっちに行きましたよ!」

「よ〜し!今渡こそっ!」

-ぴょい〜んっ!-

-ゴチ〜ン!-

「痛ぁ〜っ!」

「大丈夫ですか、じっぺいさん!?」

「…なんのこれしき…」

-バタッ…!-

「タマ、トッタラァーッ!」

-ピョイーン!-

-プルプルプル!-

-ひょい-

「素早しっこい!」

「チッ!俺としたことが〜!」

ア「…面白い子鹿ですね…♪」

「むぐぐ…何とか捕まえなきゃ!」

-ぐぐぐ…-

「どりゃぁ〜!」

-ピョイ〜〜〜ンッ!-

「おおっ!じっぺいさん!」

-パシンッ!-

「捕まえたーっ!」

「おおっ!鉄砲玉が獲りやがった〜!」

ア「くっ…面白いことを言うじゃありませんか…♪」

「キュイキュイキュイ!」

「ありぇ!?これは…!?」



火の山!


-トコトコトコ-

「それにしても何だったんだろうね…?

あの小屋は…」

「不思議な話ですね…

出口と思った方向が入り口だったなんて…

そんなに広い小屋には見えなかったのに」

「そうなんだよ!

全然、見かけと違うんだ!

おりぇ、相当走ったのに、

出てみたら直ぐ裏側だったからビックリして…!」

「本当に奇妙な小屋ですね…」

-ぷるぷるぷる-

「そんなこと言って、

ビビって小便チビったんじゃないのかぁ〜!」

「そんなことしないよ…!!

まったくイサオは…!」

「まあまあ、無事だったわけですし」

「そろそろ、火の山だぞ〜!

心してかかれや〜!」

「…はいはい…!

それにしてもスゴい熱だね…!」

「噂に違わぬ火山ぶり…!

私、初めて来ましたよ!」

「そうなのっ!?おりぇ二度目♪」

ア「へぇ〜!…あっ!」

「ふぇ?」

ア「今、火ギツネがっ…!」

「あっ…!」

「待てやコラ〜っ!」

「あっ、イサオ!」

-タッタッタッ!-

「待ってください!私も…!」

-トットットッ-



立て付けの悪い窓


-タッタッタッ!-

「お〜い!イサオ!

…って、あれ?いない…」

-ガタガタガタガタ!-

「うわっ!何だ、あの窓!」

-ガタガタガタガタッ!-

-ゴドッンッ!-

「うわっ…!」

-ガシャーンッ!-

-パリン…!-

「…危なかった!

それにしてもいきなり割れるなんて…!」

-ガタガタガタ…-

「立て付けが悪かったんだな!きっと!」

-タッタッタッ!-

「お〜いっ!イサオ〜っ!」


-ガタガタガタ…-



不思議な小屋


-ぬどぉ〜ん…-

「なんか陰気な建物だね…」

「そうですね、陰鬱な感じというか…」

「ぬぁにビビってんだ〜!?」

-ぷるぷるぷる-

「あっ、行っちゃった…!

お〜い!待てよ、イサオ〜!」

-タッタッタッ!-

「まっ!待ってください、じっぺいさん…!」

-ヒュー…-

「こんなところに一人で置いてけぼりとは…」

-ヒュ〜-

「…怖い!」



-タッタッタッ-

「どこだ〜イサオ〜!?

…いないなぁ…」

「…ぬぁにぃ…こらぁ…!」

「あっ!イサオだ!」

-タッタッタッ!-



勇敢なる子鹿、イサオ!


-ズルズルズル-

「大丈夫、アヒルどの?」

「なんとか…」

「でも、良かったよ!

結果的に一緒に旅を出来て…」

「なぁにぃ気持ちの悪いこと言ってんだ〜!」

「うるさいなぁ、もう…!」

「ブチブチ言ってる暇があったら、

本気で歩けや〜!コラ〜!」

「ハイハイ…本当にうるさいんだから、

おチビのくせに…マーシィみたいだな!」

「なぁんだとコラ〜!?

俺の何処がチビだってんだぁ〜!?」

「どう見ても全身が!」

ア「クッ…!」

-ぷるぷるぷる…!-

「イサオ、もっとリラックスしなよ?

力み過ぎだよ!」

「ぬぁ〜にぃ〜!?

この気の抜けた炭酸ニャロ〜め〜!!」

「まあまあ二人とも…」



アヒルどのとの別れ?


-トタトタトタ-

「…さあ、そろそろですか!」

「じゃあ、この辺で…」

-ボトン…-

「なんか…寂しいですね…」

「そう言わないでください…また会えますよ!」

「…そうですね…また…!」

「それにしても…いない…

ここで待ち合わせのはずなんですが…」

-ぷるぷるぷる…!-

「なぁに~無視してくれちゃっててんだ~!

コラァ〜!」

ア「なっ!?」

「ほぇ!?」

-キョロキョロ-

ア「誰もいない…?」

「でも今、スゴい声がしたよね!?

ひび割れた鍋が鳴ったような声が…!」

「だぁれがひび割れた鍋だぁ〜!

このトンチキがぁ〜っ!」

「ほへっ…!?」

-キョロキョロキョロ-

ア「あっ…!」

「なんだこの子鹿は…?」

「俺がイサオだ!覚えとけコンニャロ〜!」

ア「ひどく言葉遣いが…」

「その上、態度もデカい…」

「なんだとこのヤロ〜ッ!?」

-ドスッ!-

「ぶげっ!」

「止めてください、イサオさんっ!」

ぐへっ…!

何てヤツなんだ!

「俺がイサオだ〜っ!文句あんのか〜っ!」

-ドスッ!-

ア「グフッ…!」

「あ、アヒルどの〜!?」

「む…無念です…!」

-ドサリ…-